国指定重要文化財旧河野家住宅の屋根修復に携わった職人さんたち
四国村ミウゼアムでは、文化庁・香川県・高松市から補助金をいただき、令和6年度事業として国指定重要文化財・旧河野家住宅の美観向上事業に取り組んでいます。
屋根の修復作業は2月いっぱいでほぼ終了し、今後の予定では3月10日(月)に足場を撤去し、その後土壁や土間の楮蒸し釜を修復するための左官工事を行います。
内部を公開できるのは3月20日ごろになりそうですが、まもなく差し茅で装いを新たにした茅葺屋根の美しい姿をご覧いただくことができそうです。
今回の屋根修復工事では、神戸の職人さんたちに活躍していただきましたが、そのプロフィールをご紹介します。


茅葺き屋根の修復工事では、すべての茅を新しいものに替える「葺き替え工事」と、古い茅で使えるものは残しながら新しい茅を補充していく「差し茅工事」があります。今回の河野家住宅の工事では、「差し茅」の手法を選択しましたが、茅のほぼ8割近くを新しい茅に替える大がかりなものでした。
国では文化財保存のために欠くことのできない伝統的な技術である「文化財の保存技術」のうち、保存の措置を講ずる必要のあるものを「選定保存技術」として選び、その保持者や保存団体を認定する制度を設けていますが、今回河野家住宅の屋根工事を行ったのも、こうした技術を有する神戸の職人さんたちです。
今回の修復工事で目立ったのは、若い職人さんたちが多いことです。
津村祥平さん(25)は大学院を卒業して、すぐにこの世界に入りました

茅葺き職人を希望したきっかけは、「自然素材だけで家を作れることがすごいなと感動した」ことでした。古い茅を畑にまけば肥料としても使えるし、ムダのないことにとても感心したそうです。いま世界ではSDGsの大切さが言われていますが、環境のことを考えながら豊かな暮らし方ができることにとても魅力を感じたそうです。
この世界に入って良かったと思うことは、「自分の体を動かして働けること。夜はとても気持ちよく眠れて、そこがいいです」と話します。
小川珠潮さんは24歳。大学で建築を学んだことがきっかけで茅葺職人を志しました。

大学生の時に建築を志して、授業の一環で海外の建築を調べたときに、デンマークの建物で屋根面も壁面もぜんぶ茅葺で作られた建物を見つけ、その建物がとても現代的な魅力を備えていたことに興味を持ったそうです。茅葺の建物は日本だけではなく世界各地にあって、ヨーロッパでは新築の建物も増えているそうです。日本でも一般の人たちが家を建てるときに、茅葺の建物が選択肢の一つとして入ってくれるような、魅力的な茅葺の建物を作っていきたいと願っています。
3人目は高橋花歩さん(25)です。茅葺職人の世界に入って4年目の女性です。大学生の時にアルバイトで茅葺の仕事に携わったことがあり、面白いなと思ったのがきっかけだそうです。
屋根はそれぞれの家で異なって同じということはないので、毎回いろいろと考えながら作業をすることが難しくもあり、面白いところでもありますと語ります。竣工した時に持ち主の方にとても喜んでいただけるのが一番うれしいそうです。

今回の職人さんたちの中で一番のベテランは山中 和さん(38)です。茅葺職人の世界に入って15年、これまでに神戸市周辺の文化財や個人宅のかやぶき工事をたくさん経験してきました。

こちらは古い茅を引き出す道具。

そしてこちらは茅に差して、屋根を支える木材に茅を固定するための道具です。

先輩として、若い職人たちに技術を伝えながら感じているのは、若い人たちがこの仕事を選んで来てくれたことに対する感謝の気持ちと、長くこの仕事を続けてほしいという願いです。
みなさんは河野家の仕事が終われば、また新しい現場で文化的な建造物を守っていくための仕事を続けていきます。
河野家でのお仕事、本当にお疲れ様でした。




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